「非常用屋外拡声システム調査研究委員会」は,「災害等非常時屋外拡声システムのあり方に関する技術調査研究委員会」(以下前委員会)の後継組織として,委員の公募を経て2019年11月に設置された。
以下は前委員会の設立の主旨と経緯である。
2011年3月11日の東日本大震災をきっかけとして,災害情報を市民に的確に伝えるための情報通信手段の研究開発と社会実装が一段と進んでいる。その中でスピーカからの拡声音は,受け手が特別な装置を必要とせずディジタルディバイドの問題もないという点で大変有効な情報伝達手段であり,今後も情報伝達の多様化が図られるなかで一つの重要な手段として活用されていくと考えている。
しかし,東日本大震災後の社会調査では,防災行政無線の屋外拡声音をよく聞き取れなかった市民が20%いたことが示されている[1]。その背景には,従来,屋外拡声システムにおいて音の伝達の観点からの規準が存在しないことが一因であると考えられる。
このような規準の策定には,音伝搬の物理,音響計測,音声知覚を始めとする広汎な音響学の知見を総合した検討が必要であり,音響学全般に関する研究の促進と社会への寄与を目的としている日本音響学会は,そのような総合的検討の主体としてふさわしいと考えられる。
このような検討を背景として,「災害等非常時屋外拡声システムのあり方に関する技術調査研究委員会」が日本音響学会の役員会決定により2013年1月1日に設置された。その目的は,防災行政無線の屋外拡声装置に代表される重要な情報の伝達用屋外拡声システムの設計と性能確認に用いるべき学会規準等の策定を行うことである。
この目的に沿って検討を進め,災害等非常時屋外拡声システムの性能確保のための規準(第1版)を策定し,公開している。